開発担当

富田 尋

Privia初号機の仕様・開発を担当。

開発担当 富田 尋開発担当 富田 尋
「Privia」が誕生した背景、そして目指したもの

「Privia」が誕生した背景、そして目指したもの

一言でいってしまうと「それまでの常識を覆す」ことから、Priviaの開発はスタートしました。電子ピアノはあくまでアコースティックピアノの代用品と考えられ、クラシカルで重厚感のあるものが主流だった当時、その逆を行くように“世界最小、重さ・価格は従来モデルの2分の1”という従来にないコンセプトを掲げたのです。実はこの裏では、カシオがすでに持っていた電子キーボードユーザーからの生の声も参考となっていました。結果として、この発想はたくさんの方々に受け入れられ、「スタイリッシュ・コンパクト」というジャンルを拓くことに成功しました。また、電子ピアノがより身近な存在となったことで、楽器専門店以外にも取扱い店舗が拡大し、お客様との出会いがさらに広がるという嬉しい効果も生みました。

「Privia」が誕生した背景、そして目指したもの

高い性能と小型化・軽量化の両立

ピアノとしての高い性能を持ちながら、小型・軽量化を実現することが開発当初の大きな課題となりました。例えば、分かりやすい例が鍵盤です。アコースティックピアノの鍵盤が持つ自然な重さ・タッチを出すためには、内部に場所を取るハンマーのアクションが必要なのですが、その一方では小型化も追求しなければならない。この両立にはかなりの工夫を要しました。また軽量化の面でも同じで、鍵盤を支える鉄板を軽いプラスチック素材に変更すると今度は強度が足りなくなる、といったことの繰り返しです。数えきれないシミュレーションを行い、たどりついた基本構造。それは、実は今の最新モデルにも生かされています。

強い信念が生み出したPriviaの魅力

強い信念が生み出したPriviaの魅力

開発の立場から見たPriviaの強みは、開発コンセプトを徹底的に追求している点にあると思います。世界最小で、さらに重さも従来の1/2まで落とすというのは、本当に簡単な目標ではありませんでした。しかしだからこそ、他にはない“Priviaならでは” という個性が確立され、「スタイリッシュ・コンパクト」というジャンルを拓き、ユーザーへ広く親しまれるようになったのではないかと思うのです。例えばこのコンセプトが“軽く・小さく”のように具体性を欠き、重さも価格も従来の70%~80%程度で終わっていたとしたら、今のPriviaはなかったかもしれません。

強い信念が生み出したPriviaの魅力

思い出深い、2006年の最上位モデルPX-800

2006年に発売されたPX-800が、いちばん思い出深いモデルですね。あの頃最先端であったトリプルエレメントAIF音源と、細やかな強弱表現を可能にした高性能タッチ検出システムを搭載した、当時のPrivia最上位モデルです。私は販売研修のため、ある家電量販店の店頭に立ったのですが、その日1日でこのモデルを3台お買い上げいただくことができました。接客に不慣れな私が結果を出したことに、まわりのスタッフたちにはずいぶんと驚かれたのですが、後になって考えるとPriviaの中でも特にポジションのはっきりしていたこのモデルが、私にはお客様にご説明しやすかったのかと思います。やはり、商品には個性や特徴がとても大切なのだと、あらためて感じさせてくれたモデルでもあったわけです。

10周年を迎えての新たなチャレンジ

Privia誕生10周年を迎えた今年、思い切ったデザインにチャレンジした、新たなモデルを発売しました。PX-A100は、ピアノの固定観念から脱却した、メタリックのレッドとブルーのカラーリング。さらにPX-A800は、木の質感そのものをストレートに表現する木目柄を大胆に採用しました。どちらも、お客様からの反応が楽しみですね。
斬新な外観とともに、機能にもいくつか特長があります。まず「ホールシミュレーター」という新機能なのですが、これは世界の有名なコンサートホール・教会・野外スタジアムなど10種類の響きのイメージをシミュレートしたもの。また、ロックやジャズなど演奏する曲やシーンに合わせた10種類のグランドピアノ音色も搭載しました。どちらも、ユーザーの持つ“憧れ”や“想い”に応える、新たな技術です。